TREATMENT PROTOCOL — 処方について
病型と症状に応じた、
標準プロトコル。
FIPサポート が推奨する処方プロトコルは、ドライ型/ウェット型それぞれの病態に応じて
投与量を最適化したものです。総治療期間は病型を問わず84日間を標準とし、
途中で寛解がみられても短縮しません。本ページの内容は治療指針であり、
実際の投与量・期間は獣医師の最終判断に従ってください。
標準的な治療フロー
診断から治療完了まで、5つのステップ
01
診断・重症度評価
血液検査、超音波、症状の確認、腹水性状の確認
02
初期治療:注射
注射剤(20mg/ml)による集中治療。最低1週間の継続を推奨
03
経口へ移行
状態が安定した後、錠剤へ切り替え。神経・眼症状例は症状の完全消失後に移行
04
調整・観察
定期検査で経過観察。毎週体重を再計量し、現在体重で用量を再計算
05
治療完了
ドライ型・ウェット型ともに 通常84日間(途中寛解でも短縮しない)
DRY TYPE — ドライ型
ドライ型 注射処方量
1本6mlバイアル、20mg/ml を使用
通常用量(体重1kgあたり)
0.6 – 0.8ml / kg
神経・眼症状をともなう例SEVERE 0.8 – 1.0 ml/kg(回復しても減量しない)
体重別 1日投与錠数(経口移行期)
基本は体重2kgにつき1錠。1kg以下の子猫は0.5錠。4kg超や中間体重は獣医師の判断で調整。体重は毎週再計量し、現在体重で再計算します。
主な適応・重症症状
後肢の脱力(ふらつき、起立困難)/ 神経症状(痙攣、旋回運動など)/ 眼病変(ぶどう膜炎、眼の白濁)
WET TYPE — ウェット型
ウェット型 注射処方量
1本6mlバイアル、20mg/ml を使用
推奨用量(複合型想定・体重1kgあたり)
0.52 – 0.60ml / kg
従来既定値 0.4 ml/kg の 1.3〜1.5倍。純粋なウェット型と確認できる場合は 0.4 ml/kg も可
体重別 1日投与錠数(経口移行期)
体重 〜 2.0 kg
0.75錠
3/4錠 / 日
体重 〜 4.0 kg
1.5錠
/ 日(1日1回)
基本は体重2kgにつき0.75錠(従来0.5錠の1.5倍)。1kg以下の子猫は3/8錠(分割困難な場合は1/2錠へ切り上げ)。4kg超・中間体重は獣医師判断で調整。体重は毎週再計量し、現在体重で再計算します。
投与量決定のポイント
実臨床の大半はウェット+ドライの複合型のため、既定用量は複合型を想定/ 腹水・胸水の減少度合いと全身状態を確認しながら調整/ 経口移行は腹水減少・状態安定後/ 腹水吸収による見かけの体重減少では減量しない
CO-MEDICATION — 併用療法
両病型に共通する、併用推奨療法
抗ウイルス薬単独ではなく、炎症抑制・臓器保護を組み合わせることで予後を改善できます。
必須
抗炎症薬
血管炎や肉芽腫による炎症を抑制するため、必ず併用してください。投与初期から10日前後を目安とし、長期連用は避けてください。10日以降も体内の酸化ストレスは高い状態が続くと考えられるため、抗酸化サプリ(ビタミンE、CoQ10、SAMe、グルタチオン、レスベラトロール、ブロードスペクトラム CBD など)の摂取もご検討ください。
プレドニゾロン
ステロイド系
NSAIDs
推奨
肝臓保護薬 / サプリメント
長期投与による肝臓への負担を軽減するため、可能な限りの併用を推奨します。投薬期間中は定期的な血液検査で経過観察を。
SAMe(肝保護)
ビタミンE
CoQ10
グルタチオン
レスベラトロール
ブロードスペクトラム CBD
CRITICAL POINTS — 運用・管理
両型共通の重要確認事項
i.
注射期から錠剤期への移行
初期の不安定な時期(最低1週間程度)は注射で血中濃度を確実に維持し、状態安定後に錠剤へ切り替えます。神経・眼症状例は、症状が完全に消失するまで注射を継続してください。
ii.
症状による個別調整
提示された投与量は目安です。症状の改善度合いや体重の増減に合わせて、獣医師が投与量や期間を柔軟に調整します。
iii.
飼い主の服薬遵守
長期治療(標準84日、神経・眼症状例は延長あり)となるため、飼い主のモチベーション維持と毎日の確実な投薬が重要です。「良くなったので減らしたい」というご相談には、再燃リスクを説明してください。
CRITICAL — 神経・眼症状をともなう場合
「見かけの回復」で、減量・中断しない。
全身状態の改善は、脳・眼の中の治癒を意味しません。
神経症状・眼症状をともなう例では、高用量(注射 0.8〜1.0 ml/kg 相当)を維持したまま治療を完遂してください。
01
なぜ危険か:薬が届きにくい
血液脳関門があるため、GS-441524 の脳・眼への移行は血漿濃度の約7〜21%に限られます。
腹水消失・A/G比正常化・食欲回復は「脳・眼の外側の改善」を示すだけで、脳内のウイルス残存を否定できません。
02
3つの落とし穴
早すぎる経口切替(経口の吸収率は注射の50%未満。同じ用量表記でも実効量は約半分)/
見かけの回復での減量(減った分だけ脳内濃度が下がる)/
体重増加の放置(用量据え置きは「気づかない減量」)。
03
運用の鉄則
高用量を維持し、途中で減量しない/ 注射は神経症状が完全に消失するまで継続し、その後に経口へ移行する/
毎週体重を測定し、現在体重で用量を再計算する(増えた分だけ増量)。
再発・再燃した場合
84日のカウントをリセットし、従来より高用量(目安 +5 mg/kg)で注射から再開します。最低8週間の継続が推奨されます(Pedersen, UC Davis)。
主な出典:Pedersen et al. 2019 (JFMS)/Dickinson et al. 2020 (JVIM)/Pedersen, UC Davis 治療サマリー/ISFM (Taylor et al.) 2025/JFMS Open Reports 2025
※ 脳・眼内濃度の実測は少数例にとどまり、罹患猫での系統的な薬物動態データは存在しません。だからこそ「測定できない脳内濃度を、見かけの回復を理由に下げない」ことが安全側の運用となります。
SUMMARY — 治療プロトコル比較
ドライ型 / ウェット型 / 神経・眼症状例 まとめ
| 項目 |
ドライ型 |
ウェット型 |
神経・眼症状あり |
| 初期注射期間 |
最低1週間推奨 |
最低1週間推奨 |
神経症状の完全消失まで |
| 推奨注射量 |
0.6 ml/kg |
0.52 – 0.60 ml/kg複合型想定 |
0.8 – 1.0 ml/kg |
| 注射用量範囲 |
0.6 – 0.8 ml/kg神経・眼症状時は〜1.0 |
純粋ウェット型のみ 0.4 可 |
回復しても減量不可 |
| 経口錠 基準量60mg / 錠 |
体重2kgにつき 1錠1kg以下は0.5錠 |
体重2kgにつき 0.75錠1kg以下は3/8錠 |
体重2kgにつき 1錠症状消失後に移行 |
| 経口錠 体重別目安1日1回 |
〜2kg:1錠 / 〜4kg:2錠 |
〜2kg:0.75錠 / 〜4kg:1.5錠 |
〜2kg:1錠 / 〜4kg:2錠 |
| 総治療期間 |
通常 84 日 |
通常 84 日途中寛解でも完遂 |
84 日以上基準を満たすまで |
KEY TAKEAWAYS
1
病型と症状に応じて
投与量を決定(期間は84日)
⚠ 免責事項
実際の投与量・期間は、個体の症状や検査結果に基づき獣医師が最終判断します。猫への注射が困難の場合は錠剤のみの適用も可能です。用量引き上げに伴い注射容量が増えるため、注射部位のローテーションと局所反応の観察を徹底してください。
本ページは治療指針であり、医療的判断の代替ではありません。