FIPの治療記録アプリ「FIPケア手帳」をつくりました ─ 無料・どなたでも、GS-441524/モルヌピラビル/レムデシビルに対応

84日間続くFIPの治療を、毎日の記録で支えるためのアプリです。利用料は無料で、私たちから薬を購入されたかどうかに関係なく、どなたでもお使いいただけます。

本記事は、FIPサポート(fip.support)が開発・運営する記録アプリの紹介です。アプリは治療の記録を残すための道具であり、診断や、お薬の種類・量の判断は行いません。治療方針はかならずかかりつけの獣医師とご相談ください。

なぜ記録のアプリをつくったのか

FIPの治療は、多くの場合84日間(およそ12週)続き、そのあとにも経過をみる期間があります。毎日のお薬、ごはんの量、おしっこの色、体重の変化を、記憶だけで3か月追い続けるのは簡単ではありません。とくに治療の始めは、猫の状態も飼い主さんの気持ちも揺れ動く時期です。
一方で、診察室で獣医さんが見られるのは、通院した日の数十分だけです。食欲が戻ってきたのはいつか、お薬のあとに吐いたことがあったか、おしっこの色はどう変わってきたか。こうした「家でのようす」を正確に伝えられるのは、毎日そばにいる飼い主さんだけです。
そこで、毎日の記録を手間をかけずに残し、通院のときにそのまま獣医さんへ渡せる形にまとめる手帳として、このアプリをつくりました。

無料・どなたでも使えます

利用料は無料です。
FIPサポートから薬を購入された方に限らず、ほかの入手経路で治療している方、動物病院で処方を受けている方、保護団体の方も、どなたでも同じようにお使いいただけます。アプリの中で薬の購入をすすめることもありません。

アプリストアからのダウンロードも不要です。スマートフォンのブラウザ(iPhoneはSafariまたはChrome、AndroidはChrome)で app.fip.support を開くだけで使えます。パソコンでも開けますが、毎日の記録はスマートフォンでの利用を前提にしています。

3つの治療薬に対応しています

はじめの登録で「FIPのお薬は どれですか」と聞かれたら、次の中から選びます。注射か飲み薬か、1回の量、1日の回数、お薬の時間もあわせて登録します。

  • GS(GS-441524)
  • モルヌピラビル
  • レムデシビル
  • そのほかのお薬
  • わからない(獣医さんから聞いていない、名前がわからないとき)

治療の途中で量や回数が変わったとき、注射から飲み薬に切りかえたとき、お薬そのものを変えたときは、設定の「処方」から新しい処方を登録します。切りかえる日は60日先まで先に入れておけるので、「あしたから量を変えましょう」と言われたその場で登録でき、その日になると自動で切りかわります。処方を変えても、それまでの記録は記録したときの内容のまま残ります。

FIPケア手帳の3つの画面。治療薬をGS-441524・モルヌピラビル・レムデシビルなどから選ぶ画面、登録した処方をワンタップで記録する投薬画面、処方の変更と履歴を管理する設定画面

図1:左から、治療薬を選ぶ画面、投薬の記録画面、処方の設定画面。登録した処方は投薬画面にボタンとして並び、1回ぶんをワンタップで記録できます。

アプリはお薬の量を決めません
お薬の量は、獣医さんから指示された量をそのまま入れてください。画面には体重あたりの量(mg/kg)が表示されますが、これは登録した数字を計算して表示しているだけで、量が適切かどうかの判断ではありません。

なお、2つのFIPのお薬を同じ日に併用する場合は、現時点では両方を処方として記録できません。主に使うお薬を処方に登録し、もう一方はメモに製剤名と量を書いておいてください。ステロイドや抗菌薬、皮下輸液など、FIPのお薬以外のものは「ほかのお薬」としてボタンで記録できます。

記録できること

記録はほとんどがタップと写真だけで済みます。時刻は押したときの時刻が自動で入るので、文字を打つのは猫の名前とメモくらいです。

記録 残せること 伝わること
投薬 FIPのお薬・ほかのお薬・皮下輸液
あげられなかった日、1回だけ量を変えた日
指示どおりに投与できていたか
ごはん カリカリ/ウェット、食べた量(4段階)
器に出した量、強制給餌、写真
食欲の戻り方
おしっこ 写真(日付順に並べてくらべられる) 色のうつりかわり
うんち かたさ、色(黒っぽい・血がまじる・白っぽい)、写真 便の異常の回数
嘔吐 ワンタップで記録
飲み薬から何分後に吐いたかを自動で記録
お薬が吸収できていたか
様子 元気/ふつう/ぐったり、写真、短い動画 全身状態の変化
体重 0.01kg単位、グラフで推移を表示
元気だったころの体重との差
体重の回復と、量の見直しの材料
検査票 血液検査の結果の写真を採血日順に保存 検査値の経過
メモ 気づいたことを自由に ふだんの記録に無いこと

記録した日は、84日を1マスずつ並べた「84日スタンプ帳」に肉球のスタンプが付きます。採血の目安の日(Day 28・56・84など)にはしるしが付き、検査票を登録すると「済み」に変わります。84日が終わると、そのまま観察期間のカレンダーが続きます。
電波の無いところでも記録でき、電波が戻ると自動で送られます。複数の猫を飼っている場合も、画面の上の名前で切りかえて何匹でも記録できます。

FIPケア手帳の3つの画面。治療Day数ときょうのやることを表示するホーム画面、9つの記録ボタンが並ぶきろく画面、期間のまとめと日ごとの記録表を載せた通院用サマリー

図2:左から、ホーム画面、きろく画面、通院用サマリー。ホームには治療開始からの日数と、その日にまだ記録していない項目が表示されます。

通院のときに渡せる「通院用サマリー」

毎日の記録は、通院のときに獣医さんへ渡せる紙(PDF)にまとめられます。期間は直近7日・直近14日・ぜんぶから選べます。iPhoneでは共有メニューから「PDFで保存」すれば、そのままLINEなどで送ることもできます。
サマリーには、いまの処方、期間中のまとめ(お薬の回数と予定、ごはん、嘔吐、うんちの色、体重など)、日ごとの記録の表、おしっこの写真、検査を受けた日、メモが載ります。打ち忘れや1回だけ変えた量、飲み薬のあとの嘔吐は「お薬でいつもと違ったこと」として別にまとめられるので、診察で確認すべき点がひと目でわかります。
記録の無い項目は空欄にせず、「この期間には記録されていません。」と書かれます。記録していないのか、何も起きなかったのかを、獣医さんが取り違えないための工夫です。

家族や仲間と、交代で記録する

同じ猫を、家族や保護団体の仲間など複数の人で記録できます。だれが記録したかは、記録ごとに名前で残ります。朝のお薬は自分、夜は家族、といった分担でも、記録はひとつにまとまります。
招待は、設定の「いっしょに記録する人」でリンクをつくり、LINEなどで送るだけです。リンクは7日で使えなくなり、送るのをやめたときは取り消すこともできます。招待された人は、自分のメールアドレスでログインして参加します。

はじめかた

  1. スマートフォンのSafariかChromeで app.fip.support を開きます。
  2. メールアドレスを入れると、ログイン用の数字とリンクが届きます。パスワードは不要です。
  3. 利用規約とプライバシーポリシーを読み、同意して始めます。
  4. 猫の名前、FIPのタイプ、元気だったころの体重、治療を始めた日、お薬の種類と量を、1画面に1問ずつ答えて登録します(全14問)。わからない項目は空欄のまま進めて、あとから直せます。
  5. 毎日すぐ開けるよう、ホーム画面にアイコンを置いておくと便利です。
LINEで受け取ったリンクは、SafariかChromeで開きなおしてください
LINEの中のブラウザは、いつものブラウザとログインが別になり、電波の無いところでは開けないことがあります。また、ログイン用の数字とリンクはそれだけでログインできてしまうので、ほかの人に見せたり、LINEのグループに貼ったりしないでください。

画面の写真つきのくわしい使い方は、FIPケア手帳 つかいかたのページにまとめています。

記録の扱いと、研究への協力について

記録は、同じメールアドレスでログインすれば、スマートフォンを買いかえても、2台の端末からでも見られます。退会すると、30日を過ぎたあとに記録と写真はサーバーから完全に削除されます。
FIPサポートでは、記録を匿名にしたうえで、FIP治療の研究(飼い主向けの記事・学会発表・論文)に使わせていただくお願いをしています。これは任意で、同意しなくてもアプリはすべてそのまま使えます。同意は猫ごとにオーナーにうかがい、あとから設定でいつでも取り消せます。
治療中の猫が家庭で毎日どう過ごしているかを、まとまった数で追った記録はまだ多くありません。ご協力いただいた記録は、これから治療を始める猫と飼い主さんのための情報として還元していきます。説明文書は研究利用への同意についてからご覧いただけます。
アプリの不具合やご意見は、info@fip.support までお寄せください。アプリはまだβ版で、使ってくださる方の声を聞きながら育てていく段階です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の猫の診断・治療方針を示すものではありません。実際の診断と治療は獣医師の診察と指導のもとで行ってください。FIPケア手帳は記録のためのアプリであり、診断やお薬の量の判断は行いません。